horse

鈴は東京農大のニ年生で、馬の直腸検査をしていた。
蛙の解体にもびくともしない子供だったが、ふと、ご当地キャラクターのぐんまちゃんのクッキーを見て「こわい」と思ってしまい、以降拒食気味の日が続いたことがあった。一週間後にはけろりとしていたが、生物の授業を愛する一方で、動物を食べることへの小さな嫌悪感がぬぐえなかった。結局農大に入って胎盤研究のゼミに入るために課外活動をしているわけだが、最近はまた拒食気味になってきていた。

鈴は馬の直腸をぐにぐにと揉みながら、ふと、馬に私がコントロールされてるみたいだな、と思った。ふふふ、と笑うと、馬が、「そう」というのが、聞こえてしまった。驚いて危うく手を引っ込めそうになったが、急に引き抜いては後ろ足に蹴られる。直腸を通じて、馬が語りかけてきているようだった。「動くとぶつわよ」馬は鈴に言った。むしろぶたれたいような気持ちだった。

続く。

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