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金藤 みなみ KINTO Minami

略歴

アーティスト。1988年徳島県生まれ、東京都在住。衣装家・小道具家としてキャリアをスタートし、パフォーマンス、ビデオインスタレーション、マスク制作、小説執筆などで活動。2013年から2016年まで渋家に在籍。女子美術大学・多摩美術大学大学院・新芸術校で学ぶ。
主な個展に「ザ・マスクウーメン」鶴見区民文化センター サルビアホール(神奈川県、2020年)、「The crying women」dongsomun(Seoul City[韓国]、2018年)、「THE DOUBLE KISS すみだがわ キスする ふたつ」あをば荘(東京都、2013年)、がある。
主なグループ展に、「VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」上野の森美術館(東京都、2023年)、「芸術の四国遍路展」巡回展・徳島市立徳島城博物館(徳島県)・藁工ミュージアム(高知県)・チェルベロコーヒー(高知県)・ギャラリー リブ・アート(愛媛県)・塩江美術館(香川県)(2022年)、「芸術ハカセは見た!~徳島のひみつ~」徳島市立徳島城博物館(徳島県、2020年)、「反魂香」西方寺(東京、2017年)、「BOYS LOVE -花-」野方の空白(東京、2017年)、「かわる、うつろう、展覧会」GALLERY X BY PARCO(東京、2017年)、「DMZ art festival」DMZ芸術祭(Hwacheon City[韓国]、2017年)、金藤みなみ+GiliLavy展覧会「イスラエルから来たコロッケ」ナオ ナカムラ(東京都、2016年)などがある。
主なパフォーマンスに「みなみと遊女の本当の浄土」野外(東京、2017年)、主なスクリーニングに映像作品上映会「あ・る・く」TAV GALLERY(東京、2015年)がある。

>受賞歴

2023年 VOCA展2023   入選

2016年 トーキョーワンダーシード2016 入選

2015年 シブカルスター誕生祭 カッパ師匠賞(遠藤一郎 選) 受賞

2015年 the Katzman scholarship for The league Residency at VYT スカラシップ 獲得

2015年 第十八回岡本太郎現代芸術賞 入選

2012年 大舘/ゼロダテ ゼロ展 入選(中村政人 選)

2011年 女子美術大学加藤成之記念賞、 女子美術大学美術館賞

2010年 第五回女子美術大学File?展 最優秀賞

2009年 第四回女子美術大学File?展 優秀賞

2007年 第二回女子美術大学File?展 美術館賞

>学歴

2017年 ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 上級コース 修了
2016年 ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 上級コース 入校
2013年3月15日 多摩美術大学 大学院 美術研究科博士課程前期過程 修了
2013年 弘益美術大学校 芸術学部絵画学科交換留学プログラム(韓国)(多摩美術大学在籍中)2011年 多摩美術大学 大学院 美術研究科博士課程前期過程 入学
2011年 女子美術大学 芸術学部絵画学科(洋画) 卒業
2007年 女子美術大学 芸術学部絵画学科(洋画) 入学

> 所属歴

2011年 ニッチクラフト(2014年10月脱退)

2013年 渋家(2016年退家)

>個展

2020年 サルビアホール現代美術展 金藤みなみ個展「ザ・マスクウーメン」(2020年8月3日~8月10日 横浜市鶴見区民文化センター サルビアホール 3階 ギャラリー[神奈川]

2018年 KINTO Minami solo exhibition 「The Crying Women」/ dongsomun, [Seoul] Korea

2013年 「THE DOUBLE KISS すみだがわ キスする ふたつ」(2013年9月21日-11月10日 あをば荘[東京]

2013年 「黄金町車道ワーク」(2013年1月7日-20日 mujikobo[神奈川]

2011年 第三回『新しい眼』「金藤みなみ 展」(2011年8月22日-27日 銀座ギャラリー女子美[東京]

>ソロパフォーマンス

2019年 「白羽の矢」(2019年5月2日および7日, 画廊跡地[東京])

2019年 「白羽の矢」(2019年5月5日, Spiral[東京], 「SICF PLAY」)

2017年「みなみと遊女の本当の浄土 新宿聖地巡礼ツアー」(2017年3月3日-5日 東京)

>スクリーニング

2015年 金藤みなみ映像作品上映会「あ・る・く」( 2015年4月4日 (土) – 4月5日 (日)  TAV GALLERY [東京])

>主なグループ展とプロジェクト

2023年 「VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」(2023年3月17日〜30日、上野の森美術館[東京])

2022年 「芸術の四国遍路展」(

徳島「第三回芸術ハカセは見た! 〜芸術の四国遍路展 徳島編」

会期:2022年1月25日〜2月2日
会場:徳島城博物館(徳島県徳島市徳島町城内1-8)

高知「芸術の四国遍路展 高知編」

会期:2022年2月5日(土)〜2月22日(火)
会場:藁工ミュージアム(高知県高知市南金田28 藁工倉庫)、チェルベロコーヒー店内(高知県高知市北本町3-11-35)

愛媛「芸術の四国遍路展 愛媛編」

会期:2022年2月24日(木)〜3月8日(火)
会場:ギャラリー リブ・アート(愛媛県松山市湊町4-12-9 メゾンM2ビル3F)

香川「かがわ・山なみ芸術祭関連事業 芸術の四国遍路展 香川編」

会期:2022年5月21日(土)〜6月26日(日)
会場:塩江美術館(香川県高松市塩江町安原上602)、モモの広場責任者の大西さんのお店(さらに周辺市街地)

2022年 「Stilllive Performance Art Summit Tokyo 2022──Tribute of Performance Anthology」(2022年3月18日及び19日, ゲーテ・インスティトゥート東京 (東京都港区赤坂7-5-56)[東京],「Stilllive Performance Art Summit Tokyo 2022──Tribute of Performance Anthology」, https://www.stilllive.org/

2020年 「芸術ハカセは見た!~徳島のひみつ~」展(2020年1月9日(木)~24日(金),徳島市徳島城博物館[徳島])

2019年 TAV GALLERY 5th Anniversary Exhibition「MID CORE」(2019年7月6日 (土) – 7月21 日(日) , TAV GALLERY[東京])

2019年 「SICF Exhibition」(2019年5月3日 – 5月4 日, Spiral[東京], 「ぬいぐるむ!」ブース)

2019年 「金藤みなみのじゃじゃ馬ならし」(2019年5月1日〜8日, 画廊跡地[東京])

2019年 「ぬいぐるむ!」(2019年3月8日〜13日, 新宿眼科画廊[東京])

2017年 「DMZ(軍事境界線) 芸術祭 2017」(2017年10月28日-2月20日, DMZ[ハッチョン/韓国])

2017年 「かわる うつろう 展覧会。」(2017年10月20日-10月29日, GALLERY X BY PARCO[東京], シブカル祭2017。イベント内展覧会)

2017年 「BOYS LOVE -花-」(2017年8月25日-8月31日, 野方の空白[東京], 主催:相磯桃花)

2017年 カオス*ラウンジ「ISETAN ニューアーティスト・ディスプレ(2017年5月31日-6月6日, 伊勢丹新宿店[東京])

2017年 カオス*ラウンジ「反魂香−再演」(2017年3月26日-30日, 西方寺[東京],キュレーター:黒瀬陽平、井戸博章)

2017年 ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 上級コース 成果展『まつりのあとに』連動企画「反魂香」(2017年2月23日-27日, 西方寺[東京])

2016年 岸井戯曲を上演する#4「六本木ヒルズを守る一族」(2016年12月17日-18日 blanClass[神奈川])

2016年 「イスラエルから来たコロッケ」他スクリーニング等 Trance Arts Tokyo (2016年10月15日-30日,司 3331[東京])

2016年 「イスラエルから来たコロッケ」(2016年10月6日-10日 naonakamura,[東京])

2016年 「現在戦争画展」( 2016年8月5日 (金) – 8月28日 (日)  TAV GALLERY [東京])

2016年 「トーキョーワンダーシード」(2016年2月12日-3月31日 トーキョーワンダーサイト渋谷[東京])

2016年 「女子美術大学ガレリアニケ学芸員セレクション」(2016年1月15日-2月3日 女子美ガレリアニケ[東京])

2015年 「第十八回岡本太郎現代芸術賞」展(2015年2月3日-4月12日 川崎市岡本太郎美術館[神奈川])

2014年 「反戦  来るべき戦争に抗うために」展(2014年9月25日-29日 SNOW Contemporary[東京])

2013年 滞在制作プロジェクト「Zerodate Art Project」(201381-1030日 ゼロダテ[秋田]

2013年 グループ展「呼ぶ、呼ぶ、呼ぶ」(2013年3月10日-17日 ターナーギャラリー[東京])

2013年 グループ展「ギグメンタ2013」(2013年4月19日-29日 HIGURE 17-15 cas[東京])

>Articles

2020:

[JP]物語を紡ぎ、文化の変容に立ち会う──四国の二つの展覧会より by 橘美貴(高松市美術館)

2017:

[JP]京島でおそらく初(?)のブックマーケット 「Sumida Art Book Market」に見るアートと街づくりの関係(墨田区) by TO MAGAZINE 編集部

2015:

[JP]阿佐ヶ谷で赤い△の被り物が象徴のアーティストによる映像上映会(マイナビニュース2015年3月30日配信)

[JP]芸術超人カタログ「金藤みなみ」(岡本奇太郎/小説推理2015年2月号) 東京都

[JP]アーティスト女子会♫「空と庭とちゃんもも◎と ~プレアデス星団から愛をこめて~」

[JP]リサーチャー紹介7 金藤みなみ(カンパニーふるまい)

2011:

[JP]不連続線の真上に立って/ノンセクションの10 (「芸術は後半へ続く」Nichecraft 辻本直樹)

[JP]精霊「あけら」、黄金町から大岡川を下る。 芸術家・金藤みなみ (ドクガクテツガク)

> Artist Talks / Lectures

・「道場Night -ジャンルはどこにあるの?- 」(2011年5月29日 日本空手道無門会道場[神奈川])

・グループ展「アート&デザイン批評 Co-Core ショー」(2012年12月12日~14日 Sanoma house Mediatori[ヘルシンキ〔フィンランド〕])

・「黄金町シャドウワークブック」(2013年1月7日~15日 mujikobo[神奈川]) 1月7日 ゲスト:大小島真木(画家)《本綴じの時 – アーティストとファイルの関係 – 》 1月10日 ゲスト:カゲヤマ気象台(演出家・脚本家)《本名の不在 – ペンネームを名乗るということ – 》 1月14日 ゲスト:辻本直樹(小道具家)・岡村結花(小道具家)《本当にやりたい分野 – 肩書きで語れないこと – 》 1月15日 ゲスト:荻原永璃(脚本家・演出家)《本物の恋 – 本物の役者との出会いと、その調理法 – 》

・ 「呼ぶ、呼ぶ、呼ぶ、トークセッション」(2013年3月16日 ターナーギャラリー[東京])出演者:多摩美術大学学生 ゲスト:松浦寿夫(批評家)、林道郎(批評家)

・「ネット配信番組ほぼ週刊タガノス時間」(2013年9月8日 森吉四季美湖展望カフェ[秋田])

・「迂回路 ポートフォリオ・カフェ アート&カルチャーエクスチェンジ アジアオープンミーティング」(2013年9月18日 高架下スタジオsite-D集会場[神奈川])

・「鳳雛講座」(2013年10月18日 大館市立第一中学校[秋田])

・ワークショップ「古本再生ワークショップ」(2013年10月27日 あをば荘[東京])ゲスト:辻本直樹(小道具家)

・「クロージングのコンディション」(2013年11月9日 あをば荘[東京])ゲスト:岸井大輔(劇作家)

・「ディスカーシブプラットフォームって何?」(2013年12月22日 森美術館[東京])

・「としまアートステーション構想『としまのふるまい』カンパニーふるまい#2 《ファウンデーション」~日常をふるまいからひもとく発表会~》」(2014年2月11日 としまアートステーション「Z」[東京])

・「渋家アートカンファレンス vol.1 蔵屋美香と林道郎と金藤みなみ+増沢大輝が渋家を語る」(2014年3月1日 渋家[東京])

・「吉原芸術大サービス〜春一番〜」(2014年4月5日 吉原神社[東京])

・「3331 千代田芸術祭 アンデパンダン」 (2014年8月23日-9月7日 3331アーツ千代田[東京])

・「渋家アートカンファレンス vol.2 Mix well with art and power– 表現の自由と権力、その付き合い方 –」(2014年12月6日 渋家[東京])

・「第十八回岡本太郎現代芸術賞」展 ギャラリートーク(2015年2月16日 川崎市岡本太郎美術館[神奈川])

・「第12回グラフィック「1_WALL」展関連イベント ポートフォリオレビュー」(2015年3月25日 ガーディアンガーデン[東京])

・金藤みなみ映像作品上映会トーク「金藤みなみ × 会田誠 対談」( 2015年4月4日 (土)  TAV GALLERY [東京])

・金藤みなみ映像作品上映会トーク「金藤みなみ × Yotta ×久松知子 対談」( 2015年4月5日 (日)  TAV GALLERY [東京])

・アンデパンダン展示「マントル」(2015年5月16日-17日 トーキョー カルチャート by ビームス [東京] )

6回前橋映像祭 (2015年6月27(土)-28日(日)両日13:00 – 19:00  前橋弁天通り商店街  主催: 前橋映像祭実行委員会)

・オープンスタジオThe league Residency(2015年9月23日-25日 Residency at Vyt [ニューヨーク])

・「シブカルスター誕生祭」(2015年10月19日 ~女子が集えば世界が変わる!?~ | シブカル祭。2015

・「渋家アートカンファレンス vol.3 アートと移民とそのからだ」(2016年1月16日 女子美ガレリアニケ [東京])

・過去作上映会&舞踏家コラボレーション「あけらと歯イタ」(2016年1月30日 女子美ガレリアニケ [東京])

・「トーキョーワンダーシード」(2016年2月12日-3月31日 トーキョーワンダーサイト渋谷[東京])

>スカラシップ

2015年 the Katzman scholarship for The league Residency at VYT

>コミッション

演劇スタッフ(衣装)「野良猫の首輪」(東京公演:2013年12月4日-12月7日 シアターグリーン Box in Box〔フェスティバル/トーキョー内〕/浜松公演:2013年12月15日 万年橋パークビル/大阪公演:2014年1月11日-13日 芸術創造館)

What is complex? Why We feel border between ideal and reality? I’m just curious about what we really want to transform.
消費によって削られる装いにはコンプレックスが反映される。パフォーマンスを中心に、「同情とは、他者の痛みとは、その判断基準は何か」という問いとして作品制作を捉え、様々なボーダーを介する事情に対してアプローチをしてきた。身体は私たちに私たちの抱える問題の重みや質感を伝え、私たちの美意識がどのように生まれ、 どのようにぐらつき、変化していくのかを測量する装置だと仮定している。測量装置である身体と仮面のボーダーは、日々変わる。変化するボーダーの近くでうろつきながら、よそ者であり、クリーチャーであり、旅行者であり、友愛のある隣人であることの可能性を模索している。

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修士論文:『パフォーマンスの未分類』

(long long profile)

▲2011年、卒業制作「歯イター他者の痛みにテレポートするための変身装置ー」で女子美術大学を卒業。その後、「Achela」「Mask」「SHIN-OKUBO-BOOMERANG -a demonstration march-」などを発表。アートシーンの中で、荒削りながら鋭い宣言とユーモアのある独特の風貌のパフォーマンス・展示作りで異彩を放つ。

▲2015年、「第十八回岡本太郎現代芸術賞」入選、および、シブカル祭「シブカルスター誕生祭」カッパ師匠賞(遠藤一郎選)を受賞。

▲2017年、ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校在学時に、小説版「みなみと遊女の本当の浄土」を執筆、発表。この作品は、金藤初の「小説付きパフォーマンスツアー」の形式をとる。

寄稿

女子美ガレリアニケ学芸員 西鍛治 麻岐

今回ご紹介した作家のひとり金藤みなみは本学の絵画学科洋画専攻を卒業し、第18回岡本太郎現代芸術賞に入選した気鋭の若手アーティストです。
金藤はこれまで一貫して社会や個人あるいは他者との関係性を意識した制作活動を続けてきました。その表現手法はパフォーマンス、映像、絵画制作など多彩ですが、作品の根底に流れる思想はパフォーマンスを通してより深く豊かに育まれているように感じます。
例えば本学卒業制作の≪歯イタ~他者の痛みにテレポートするための変身装置≫(2011年)では、歯が痛い友人に着想を得て歯の被り物を装着したパフォーマンスを発表しました。他者の身体的イメージを意図的になぞらえながら別のものに見立てることで、何かに置き換えることができるのだろうか、或いはできないのだろうか。という躊躇いをアートで試みた実験的な意欲作品となりました。パフォーマンスはその性質上、状況や鑑賞者との遭遇など偶然性が強く働く行為です。そのため常に他者と新たに関係を結んでいくことになります。したがって時代や社会、他者との間にある関係性と可能性を探ろうとする金藤にとって、外部と直接的に交感可能なパフォーマンスはテーマの深淵に迫るために不可欠な活動なのではないでしょうか。
本展覧会では女子美在学中より制作を続けている、モデルとの共同プロジェクト≪Mask≫(2009年~)の新作1点を含む3点を発表しています。
“マスク”は本来外部から身を守るための衛生ツールです。しかし近年は10代を中心として、ファッションアイテムのひとつとして定着する傾向にあります。また一部ではコンプレックスをカバーするための心理的なバリアーとして“伊達マスク症候群”といった社会現象としても語られています。”
金藤はこれらマスクにまつわる現象に着目し、個人の変身表現のひとつとして捉えなおすことで、良い自画像イメージはどのように創られるのか、コンプレックスを糸口にして確かめようとしています。そして今回提示されたのはインタビュー映像やマスクを中心としたインスタレーション作品です。
本展覧会を開催するにあたり金藤に“Maskプロジェクト”を展示することに決めた理由を訊ねると次のように話してくれました。
「≪Mask≫は女性にとっての“見た目”に踏み込んだ切実なテーマの作品です。私は学生時代にこのテーマと出会いました。そしてこれまで作家を続けてこられたのもこの作品があったからです。せっかく母校で展示する機会を得ましたので、在学生に観て欲しいし伝えたいと考えました。」
≪Mask≫には金藤みなみから後輩へのささやかで力強いメッセージが隠されています。

「アートと移民とそのからだ」感想 言及家 浦野玄馬

1/16、女子美ガレリアニケで金藤みなみ・関口光太郎展関連カンファレンス「アートと移民とそのからだ」を拝聴。
オリンピックや医療ツアー等、日本の入国者に対する態度には「お客様は神様」という言葉を思い出す。ある日外からやってきて、金を落とし、後は速やかに立ち去ってくれる客人。

外国人労働者に対する処遇にしても、目下の課題に処方するサプリメントのようであり、年数縛りで新陳代謝への配慮も忘れない。というか有効成分ばかりに目を向けて身体の全面的な代謝を認めようとしないのが日本という身体だ。

だからこそ外から入ってきてそこに根を下ろす移民に関しては、治安がどうとか御託を並べながらその実日本の目には移民たちの存在自体が不正と映るのであり、はっきり言って「おもてなし」と排外思想とはいずれも根を同じくしている。

厳密かわからないが、ベンヤミンの説く戦争の「効能」を思い出してもいいだろうか。
「従来の所有関係を保存したまま、最大規模の大衆運動にひとつの目標を与えることを可能にする。」(『複製技術時代の芸術作品』)
組織を保存したままの摂取とは、これが内向きになっただけなのでは。

もし仮にアートというものに可能性があるとすれば、それは無根拠に架構され自明視されたorganization の輪郭線、内/外の切断線を、一方ではむしろより微細に縦横に刻みつけ、他方でその残滓の幾ばくかを再び、別様に、半ば無責任に纏め上げることにこそあるだろう。

そして金籐みなみさんのかづきものの、一方でその外側、穴から突き出て互いに分断された四肢、他方内側ではそれらの(時には二人分の)四肢の異形の纏め上げはまさにそれを目指しているはずだ。

2016年1月18日のtwilogより引用

金藤みなみのパフォーマンス                 菊地武彦

 金藤のパフォーマンスを初めて見たときは奇異であった。何回かこのパフォーマンスを体験したあとでも飽きないし馴れないそのたびごと不思議で奇妙な情動に駆られる。なぜ金藤のパフォーマンスはそのたびごとに奇妙な感覚を人に与えるのだろうか。そのヒントを金藤は多摩美の修士論文に書いている。「偶然出会う鑑賞者のまなざしや関係性は固定的なものでなく、山の景色のように日々動的に生まれるものだ」パフォーマンスはその性格上一期一会のものである。場所により、天候により、鑑賞者などによって常に変化し新たな関係を結んでいる。金藤のパフォーマンスが常に奇異であり続けるのは、他者とのフレキシブルな関係性を持っているからだ。
 そればかりではない。金藤と話していると独特の身体感覚のうえに様々なコンセプトやテーマが重層しているのがわかる。金藤はそれら様々なイメージの奔流をどれも打ち消すことなくぽんと投げ出してみせる。そうすることによって、ある人は政治的なメッセージを感じ取り、またある人はジェンダーの問題を読み取り、またある人はアニミズムを読み取ったりする。絵画の場合はじっくりと対峙してそれらを一つ一つ読み解いていくこともできるが、その場限りの出会いである金藤のパフォーマンスでは、すべての要素を同時に受け取ることになるので、受け取る側はなかなか深層までたどり着けない。しかし安易に自分のコンセプトに仕舞い込むのはよそう。れをそのまま不可思議なエモーションとして受け取るのが正しい賞法だと思う。
 では様々な意味を乗せる金藤の身体感覚とはどういったものだろうか。四国の山の中に育った金藤は、自分が「山に埋もれてしまう」「別の身体に入れ替わってしまう」感覚を持ったという。赤い円錐形をかぶることの意味は、山に埋もれない、自分の存在を確認することだという。緑の中の赤いかぶり物は、その場から乖離し存在を際立たせると同時に自身をもそのかぶり物によって変容させる。ウルや東京で行われた人混みでのパフォーマンスも意味は同じでろう。自然の中に埋もれるのを拒否するように、人混みの中に埋もれることも拒否しているのだ。ではかぶり物が赤い円錐形である理由はどこにあるのだろうか。円錐は木の形であり、山の形である。針葉樹の中に現れた紅葉した樹木だととれなくもない。完璧に自然から浮いた存在にしたいのならば、直方体や変なキャラクターなどのほうがいいかもしれない。金藤が円錐形を使うのは、自然や人混みに埋もれることに抗いながら、実は浮いた存在ではなくてそれらと有機的な関係を結ぶことを目指しているからではないだろうか。それゆえ円錐形の中から顔も出すし、手も出す。顔や手は他者との関係を結ぶ交感器官だからだ。
 こういった相矛盾した感情やコンセプトが金藤のパフォーマンスには満載されている。その内容はなかなか一言では語れないし、一方向からでは見られない。しかしそれが現代であろうし今を生きるリアルな感覚であろう。そしてその矛盾は自然とともに生きることを願いながらも文明を獲得してしまった人間の根源的な矛盾ともつながっているように思う
 多くの方が金藤のパフォーマンスを体験して、私とは違った感情を持ち、一期一会の個人的な関係を結んでもらいたい。

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