メカラウロコさん個展 『エコー エコー エコー…』
素敵な絨毛表現でした〜〜!
その上で、作品の感想を書く上でどうしても気になった、伝えざるをえなかったシーンと作品について重点的に書こうと思います。ツイッターにも書いたのですが、まとめ、加筆して文章にしておきます。
※太字は私の感想用ツイッター(goldenmilkvisit)で触れていなかった部分です。
①絨毛にインスピレーションを受けているであろう立体を含めた総合的な作品。
一点、人間倫理的な大きな問題を私は感じ、シーンひとつと作品ひとつを批判した。
(ハンドアウト5映像作品と7作品)
②まず作品の中では、
芥川龍之介の作品をベースとした語りが取り入れられている。
なので、芥川の「河童」の展開を取り入れることは自然だろう。
しかし、以下の重要な部分が会場でわかりやすく提示されてはいないので、該当するシーンを唐突に感じる。
作品内のキッチュとも形容できる衣装・メイクが、さらに軽薄な印象を持たせてしまう。
旧法に触れずに、作家の子への複雑な心情についてのみ語られていれば、このキッチュさは魅力だが、なんとなく問題に触れつつも最終的には作家の個人的エピソードに回収されていく時間の流れは、鑑賞者の中に湧き起こる問いを放って置かれてしまう様な印象も受ける。
前提としている芥川のエピソード(③部分のエピソードは幼児用の机に置かれている小説を仔細に読めば読むことができる)(⑤部分のエピソードは映像内の看板に記載されている)を
引用すると、
父親は電話でもかけるやうに母親の生殖器に口をつけ、「お前はこの世界へ生れて来るかどうか、よく考へた上で返事をしろ。」と大きな声で尋ねるのです。
芥川龍之介「河童」より(青空文庫)
③
すると細君の腹の中の子は多少気兼でもしてゐると見え、かう小声に返事をしました。
芥川龍之介「河童」より(青空文庫)
「僕は生れたくはありません。第一僕のお父さんの遺伝は精神病だけでも大へんです。その上僕は河童的存在を悪いと信じてゐますから。」
④
そこにゐ合せた産婆は忽ち細君の生殖器へ太い硝子の管を突きこみ、何か液体を注射しました。すると細君はほつとしたやうに太い息を洩らしました。同時に又今まで大きかつた腹は水素瓦斯を抜いた風船のやうにへたへたと縮んでしまひました。
芥川龍之介「河童」より(青空文庫)
⑤
『遺伝的義勇隊を募る※[#感嘆符三つ、113-1]
芥川龍之介「河童」より(青空文庫)
健全なる男女の河童よ※[#感嘆符三つ、113-2]
悪遺伝を撲滅する為に
不健全なる男女の河童と結婚せよ※[#感嘆符三つ、113-4]』
⑥と、ここまで引用してきたが、遺伝に関する胎児の感想や中絶と思われる描写、「悪遺伝を撲滅する為」なる文句が、芥川龍之介「河童」には含まれているわけです。
⑦その上で、メカラウロコ作品の中では旧法読み上げシーンがあり、かつ、作品の中ではこの法への投げかけに対する回収が無いように捉えられました
⑧さらに、読み上げた紙を水に溶かす(投げたら溶けてしまうといったほうが適切)という表現は、「その法の影響や与えられた苦痛の歴史が今は消えた」という表現に捉えることも可能になってしまいます
ハンドアウトを読むと、作家の興味は自身他者に対して権力を持ってしまうことから出発しているようです。(実際に作家に聞くと、親として子に対して権力を持ってしまうことから出発しているわけではなく、年下の人などに対して自分が権力を持ってしまっているのではないかというところから出発しているようです)
⑨作家が持つ、「自身の権力に対する自覚」から出発し、親になるために子を宿す権利をもつが、子に生まれてこない権利を提示する様子の潔さは、『性を祝う』に通じる面白さがあるのですが、シーンの扱いと立体作品については、表現が意味してしまうものへの責任→
⑩(表現が意味してしまうものへの責任)に対して、責任が取り切れていない、と批判しました。ただ、キャンセルカルチャーのようになるのも私の意図ではないので、これからどういうアクションが取られたり取られなかったりするのか、気になり、楽しみにもしています。→
11他にも見た方がいらっしゃれば話し合いたいなと思った作品でした