KINTO MINAMI’s the Taming of the Shrew

「金藤みなみのじゃじゃ馬ならし」
(シェイクスピアの)じゃじゃ馬ならしは劇中劇の構成をとる演劇ですが、劇中劇の外側の話に戻らずに話が終わります。まるで、現実から夢に移行し、夢から現実に戻らずに閉幕してしまったような構成です。私は、劇中劇のカテリーナが、男性が眼差す夢であるだけではなく、あらゆる性の眼差しの先にある夢にもなっていたのではないかと再解釈しました。視覚に自覚的になることで、視覚によって一方的に構築されてきた支配関係を「鬼ごっこ」のように、役割の交換可能性のあるものに組み換えました。

冒頭、顔を隠した人の顔を布越しに手で探るように確かめるシーンがあります。ある人(おそらく妹のビアンカ)がポエティックに「ねえ、お姉様、可愛いって気持ちは何かしら」と可愛さについて問いかける字幕が流れ、可愛さの定義が進むうちに、顔を隠した登場人物たちが、布をとりあって追いかけあう鬼ごっこへと発展します。散乱した布を片付け、その布を結んでやる者がいるなかでも、前は見えないまま、森の中へと皆で歩いていき、エンドロールが流れ映像は終わります。
不均衡な状況を、布で包むことによって(しいては皆で不都合をつかみとることによって)より根元的な欲望やエロスに従事させることは、私にとって、アイロニーを含みつつも、真に公平で美しくロマンチックに感じるものなのかもしれません。

2019年7月17日(木)

小説 「金藤みなみじゃじゃ馬ならし」について。
劇中劇のカテリーナが、男性の夢であるだけではなく、俳優ファンの女性たちの夢にもなっていたのではないか、ということを、ファンの冷静かつ過剰な純愛によって描きました。
じゃじゃ馬であるカテリーナは、結末に向かって男性の夢である理想的な女性へと変身していきます。なぜ、カテリーナが男性の夢そのものになるように駆り立てられたのでしょうか。「可愛い」と言われたいからです。「可愛い」と言われたいがために、男性の夢そのものになるように駆り立てられるのです。私は、カテリーナのようなポジションになる危険性を持っているので、男性の夢になりたがる気持ちがよくわかります。このような気持ちは、俳優であれば誰もが持つかもしれず、ファンを魅了するために、鑑賞者の夢であろうとします。この構造は、そもそも演劇という形式から逃れられないものです。鑑賞者の夢である演劇を「終わらせないまま」閉幕させたこの作品に対して、劇の外の人間たちが絡み合い過剰な程に激しい愛を持ち、見ることの欲望に自覚的であるように描きました。ビデオと同じく、主従関係を理不尽なほどにフラットにすることを考えていました。

https://kintominami.com/text/reconsideration_taming/
ad design by KINTO Minami

-Exhibition title “KINTO Minami’s the Taming of the Shrew” 
-date 2019.05.01-08 3:00-9:00p.m. 
-performance MAY 2 and MAY 7, 3:00; 5:00; 7:00; 9:00 p.m.“A white feathered Arrow” 
-location 画廊跡地(東京都杉並区上荻4−6−6) Suginami-ku Kamiogi 4-6-6 

–plan 小林太陽+金藤みなみ Taiyo Kobayashi+Minami Kinto 
-artists 金藤みなみ、小林太陽、ユササビ(堺友里)、Artemisia 
Minami Kinto, Taiyo Kobayashi, Yusasabi(Yuri Sakai), Artemisia 
-document tomotosi
-book selection Hajime Saito, Anri Mike, Marguerite(Book Cafe Okamaruto), Yuina Wada, Minami Kinto, Yusasabi(Yuri Sakai)
For my friend. Theme is gender equal, motif is the taming of shrews.

プレスリリース

この度、西荻窪にあります「画廊跡地」にて、金藤みなみ・小林太陽共同企画による展覧会「金藤みなみのじゃ
じゃ馬ならし」を開催いたします。
本展覧会は、シェイクスピアの喜劇「じゃじゃ馬ならし」をモチーフとした「金藤みなみのじゃじゃ馬ならし」の
小説・関連映像作品を中心とした展示です。企画の金藤は本展覧会について以下のように記しています。
「じゃじゃ馬ならしが有名である理由に、英国演劇史のみならず多くの劇に影響を与えた点と、ミソジニー的解釈
によって多くの議論を巻き起こした点が挙げられるでしょう。昨今、ジェンダーイコールを中心とした様々な議論が
活発化しています。私は私なりに、ジェンダーへの問いを投げかけたいと思います。厚みのある議論の展開の1つと
して、本作品群の展開を楽しんでいただけましたらと思います。」
本展覧会には、金藤の表題作に加えて、能登の民話をモチーフとした金藤による新作パフォーマンス「白羽の矢」
をはじめ、4人の作家による作品が出品される予定です。出品作家は金藤みなみ、小林太陽、ユササビ(堺友里)、
Artemisiaの4名です。
金藤みなみは、88年生のアーティスト、観光コンシェルジュです。衣装家・小道具家としてキャリアをスタート
し、消費によって削られる装いやコンプレックスを動機に、パフォーマンス、ビデオインスタレーション、マスク制
作、小説執筆、刺繍制作で活動しています。渋家メンバー、新芸術校2期上級コース修了など、様々なコミュニティ
で活動の幅を広げる金藤の作品は、皮肉の中にあるカタルシスに定評があります。
本展覧会の企画・運営、また会場である「画廊跡地」の住人でもある小林太陽は、95年東京都生まれの映像作家
です。小林は、作家自身と他者の関係性を出発点に据えた映像作品を制作しています。
ユササビは、88年徳島県生まれのアーティスト。2018年には小金井アートスポットシャトー2Fにて、個展「ピン
ク魔術」を開催、東京「パープルタウンでパープリスム」に参加し、高い評価を受けています。
Artemisiaは、植物や鉱物(化石,天然石)を使ったアクセサリーと、魔女の軟膏作りをテーマにしたボードゲームがあ
るお店。「魔女」と「ゲーム性」および完成度に惚れ込んだ金藤が展覧会への参加を呼びかけました。
また、展覧会会期中にはジェンダーや愛に関する選書カフェ「ブックカフェ ディープリーインラブ」を併設しま
す。ぜひ選書された本を片手に、展覧会と対話を楽しむひとときをお楽しみください。

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